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JIS X 0028:1999
情報処理用語−人工知能−基本概念及びエキスパートシステム
1999制定
番号
用語
定義
対応英語
28.01.01
人工知能(1)●AI(省略形)
一般に人間の知性と結び付けて考えられる,推論(1),学習などの機能を遂行するモデル及びシステムを取り扱う学際分野。通常は,計算機科学に属するものとみなされる。備考 これは,JIS X 0001:1994に規定されている定義をこの分野に合わせて変更したものである。
artificial intelligence(1)●AI(省略形)
28.01.02
人工知能(2)●AI(省略形)
一般に人間の知性と結び付けて考えられる,推論(1),学習などの機能を遂行する,機能単位の能力。
artificial intelligence(2)●AI(省略形)
28.01.03
知識(人工知能における)
系統だって使用することができるように整理された,事実,事象,信念及び規則の集合。
knowledge(人工知能における)
28.01.04
領域(人工知能における)●対象領域●ドメイン
知識又は専門的知識の特定の分野。
domain(人工知能における)
28.01.05
知識ベースシステム●KBS(省略形)
知識ベースからの推論(2)によって,特定の領域又は応用分野の問題を解決するように設計されている情報処理システム。備考1.用語“知識ベースシステム”は“エキスパートシステム”と同じ意味で使用されることがあるが,後者は通常,専門家の知識に限定される。2.知識ベースシステムには,学習能力を備えたものもある。
knowledge−based system●KBS(省略形)
28.01.06
エキスパートシステム●ES(省略形)
人間の専門的知識で構築された知識ベースからの推論(2)によって,特定の領域又は応用分野の問題を解決するように設計されている知識ベースシステム。備考1.用語“エキスパートシステム”は“知識ベースシステム”と同じ意味で使用されることもあるが,後者と異なり,専門家の知識に重点が置かれることに注意する必要がある。2.エキスパートシステムには,過去の問題処理の経験を通じて自らの知識ベースを改良したり,新しい推論(2)規則を作りだしたりする能力を備えたものがある。3.これは,JIS X 0001:1994に規定されている定義をこの分野に合わせて変更したものである。
expert system●ES(省略形)
28.01.07
知識工学
当該領域の専門家(エキスパート)及びその他の知識源から知識を獲得して知識ベースに組み込むことに関する学問分野。備考 用語“知識工学”は,特にエキスパートシステム,その他の知識ベースシステムの設計,構築及び保守の技術を指すことがある。
knowledge engineering
28.01.08
知識表現
知識をコード化して知識ベースに記憶する過程,又はその結果。
knowledge representation
28.01.09
知識獲得
知識を探し出し,収集し,洗練し,知識ベースシステムが更に処理できる形式に交換(★「変換」か?★)する過程。備考 知識獲得は,通常知識技術者の介入を意味するが,機械学習の重要な要素でもある。
knowledge acquisition
28.01.10
認知モデル化
人間の知覚,行動,記憶及び推論(1)を情報処理の観点からモデル化すること。
cognitive modeling
28.01.11
推論(1)
人間又は計算機が,仮説を設定したり,分析,分類,診断,問題解決,又は推論(2)を行ったりするときに実行する過程。
reasoning
28.01.12
問題解決
達成したい目標につながり得る操作,又は動作の系列を決定すること。備考 問題解決とは,しばしば初期状態から出発して到達したい目標を見つけるために,問題空間を探索するプロセスを意味する。問題解決の成功は,初期状態,到達したい目標のもとで許容される結果,及び問題空間を定義する要素又は操作を知っているかどうかに依存する。
problem solving
28.01.13
パターン認識
機能単位を使用して,物理的パターン若しくは抽象的パターン,構造又は形状を識別すること。備考 これは,JIS X 0012:1994に規定される定義をこの分野に合わせて変更したものである。
pattern recognition
28.01.14
画像認識
機能単位を使用して,画像及びその構成要素並びに構成要素の特性及び空間的な位置関係を知覚し,分析すること。備考 画像認識には,場面分析を含む。
image recognition
28.01.15
音声認識●自動音声認識
機能単位を使用して,人間の声によってもたらされる情報を知覚し,分析すること。備考 認識する情報には,特定の語順の単語,特定の言語の音素などがある。声の特性から話者を同定する場合もある。
speech recognition●automatic speech recognition●ASR(省略形)
28.01.16
合成(人工知能における)
機能単位を使用して,人工の声,テキスト,音楽,画像などを生成すること。
synthesis(人工知能における)
28.01.17
画像理解
機能単位を使用して,与えられた画像及びそれが表現するものの記述を作成すること。備考 画像理解は,幾何学的モデリング,知識表現及び認知モデル化という手段によって,視覚データを統合して情報を作成することである。
image understanding●image comprehension
28.01.18
自然言語理解
機能単位を使用して,自然言語で伝達されるテキスト又は発話から情報を抽出すること,及び与えられたテキスト又は発話とそれが表現するものの記述を作成すること。
natural-language understanding●natural-language comprehension
28.01.19
コンピュータビジョン
視覚データを獲得・処理・解釈する機能単位の能力。備考1.コンピュータビジョンでは,電気的又はディジタル的に視覚場面の画像を創造するために視覚センサを使用する。2.マシンビジョンと混同してはならない。
computer vision●artificial vision
28.01.20
マシンビジョン
コンピュータビジョンを機械,ロボット,プロセス,又は品質管理に適用すること。備考 マシンビジョンはエンジニアリング分野で使用される。コンピュータビジョンと混同してはならない。
machine vision
28.01.21
機械学習●自動学習
機能単位が新しい知識・技能を獲得すること,又は既存の知識・技能を再構成することによって,自身の性能を向上させる過程。
machine learning●automatic learning
28.01.22
ニューラルネットワーク●ニューラルネット●NN(省略形)
原始的な処理要素が調整可能な重み付きリンクで結合されたネットワーク。各要素は,複数のリンクからの入力値に非線形関数を適用して値を生成し,それを他の要素へ送信し,又は出力として提供する。備考 ニューラルネットワークは,神経系の神経細胞の機能をモデルにしている。
neural network●neural net●NN(省略形)
28.02.01
事実(人工知能における)
実世界又は概念世界で,一般的に正しいと認められている実体に関する記述。備考 事実は,高い確信度をもつ信念と見ることもできる。
fact(人工知能における)
28.02.02
信念(人工知能における)
実世界又は概念世界で,その正しさが確信度という尺度で計ることのできる実体に関する記述。備考1.信念は,不完全な知識から結論を引き出すことに使われる。2.高い確信度をもつ信念は,事実とみなすこともできる。
belief(人工知能における)
28.02.03
確信度
仮説,推論規則,又は推論の結論の文の妥当性を表現する数値。備考 確信度は,完全な誤りから完全な正しさまでの幅をもつことができる。
certainty factor●confidence factor
28.02.04
ファジィ集合
各要素が,通常0から1までの,その集合への帰属の度合いを示す数値と関連付けられるという特性をもつ非古典的な集合。
fuzzy set
28.02.05
ファジィ論理●ファジィ集合論理
事実,推論規則,及び限量詞に対し確からしさの度合いが与えられている非古典的な論理。
fuzzy logic●fuzzy-set logic
28.02.06
オブジェクト(人工知能における)
一つ以上の属性をもつ,物理的又は概念的な実体。備考 オブジェクトは,通常,記号論理又は関係によって記憶されている他のオブジェクトと関連付けられる。
object(人工知能における)
28.02.07
スキーマ(人工知能における)
単純概念,実体,又はオブジェクトのクラスについての知識を,その可能な使い方を基に表現する定式化法。備考 スキーマは,概念の使い方を示すのであり,その概念の典型例を示すのではない。
schema(人工知能における)
28.02.08
パターン(人工知能における)
与えられた文脈の中で,実体を認識するために使われる,特徴の集合及び特徴間の関係。備考 特徴には,幾何学的形状,音,絵,信号,テキストなどがある。
pattern(人工知能における)
28.02.09
テンプレート
認識されるべき実体の全体又は一部と比較される参照パターン。備考 テンプレートは,文字認識,目標検知,音声認識などで使用される。
template
28.02.10
意味ネットワーク●意味ネット
オブジェクト又は状態が,互いの関係を示すリンクによって結ばれているノードとして表現される,概念指向の知識表現。
semantic network●semantic net
28.02.11
知識木
木構造的な有向グラフによって表現される階層的な意味ネットワーク。
knowledge tree
28.02.12
継承(人工知能における)
階層的な知識表現において,一つ以上のサブクラスにまたがってクラス特性を非明示的に獲得すること。
inheritance(人工知能における)
28.02.13
フレーム(人工知能における)
オブジェクトと,スロットと呼ばれる区画に記憶された特性の集合とを関連づける,データ指向の知識表現。参考 オブジェクト,スキーマ及びフレームは,同じ意味で使われることがある。
frame(人工知能における)
28.02.14
スロット(人工知能における)
フレームの構成要素であって,オブジェクト名,ファセットと呼ばれる特定の属性,値,他フレームへのポインタなどの記憶に使用されるもの。
slot(人工知能における)
28.02.15
スクリプト●シナリオ●台本
既知の実体間の相互作用の結果を決定するために,あらかじめ定義された一連の事象で使用する知識表現。備考1.事象は,シーン,設定,主題の役及び支持者によって表現される。2.データ指向で,一時点を参照するフレームとは異なり,スクリプトは,事象指向てある。
script●scenario
28.02.16
主題の役
実体がスクリプトの実行中に遂行する機能の集合。備考 主題の役はアクターに割り付けられる。
thematic role
28.02.17
支持者
スクリプトの実行中にそれ自体は行動をしない実体。
prop
28.02.18
設定●セッティング
支持者を含むスクリプトの特定の文脈。
setting
28.02.19
シーン(人工知能における)●エピソード(人工知能における)●場面(人工知能における)
スクリプトに基づいた知識表現における一連の典型的な行動又は事象。備考 レストランスクリプトでは,次のようなシーンが考えられる:入場,注文,飲食,支払,退出。
scene(人工知能における)●episode
28.02.20
行動(人工知能における)
スクリプトに基づいた知識表現において,アクターによって実行される操作。
action(人工知能における)
28.02.21
アクター●役者
スクリプトにおいて,主題の役を割り当てる実体。例 エージェント,コエージェント,受益者,患者。
actor
28.02.22
宣言的知識
事実,規則及び定理で表現される知識。備考 通常,宣言的知識は,前もって手続的知識に変換しない限り,処理することはできない。参考 宣言的知識には,信念,述語,フレームなどを含むことがある。
declarative knowledge
28.02.23
手続的知識
問題を解決したり,目標に到達したりするために実行される段階を,明示的に示す知識。
procedural knowledge
28.02.24
コンパイルされた知識
計算機が直ちに処理できるように,宣言的知識を手続的知識に変換したもの。
compiled knowledge
28.02.25
メタ知識
知識の構造,使用及び制御に関する知識。備考 メタ知識は,エキスパートシステム及び他の知識ベースシステムにおいて制御機構として有効な場合がある。
metaknowledge
28.02.26
if-then規則●if-thenルール●if-then文
前提又は条件を表すif部と,if部が真である場合に実行される結論又は動作を表すthen部とから構成される規則。
if-then rule●if-then statement
28.02.27
左辺●前提部●条件部
if then規則の“if”部にある事実又は文の集合。
lert-hand side●premise part●condition part
28.02.28
右辺●帰結部●結論部●動作部
if then規則の“then”部にある事実又は文の集合。
right-hand side●conclusion part●action part
28.02.29
プロダクション規則●プロダクションルール
ルールベースシステムにおいて,知識を表現するために用いられるif-then規則。
production rule
28.02.30
メタ規則●メタルール
他の規則又は規則の集合を適用する条件,順序及び方法を規定する規則。備考 メタ規則は,エキスパートシステム及びルールベースシステムにおいて,制御機構として有効な場合がある。
metarule
28.02.31
制約規則●制約ルール
探索を問題空間の指定する部分に制限する規則。備考 制約規則は,エキスパートシステム及びルールベースシステムにおいて,制御機構として有効な場合がある。
constraint rule
28.02.32
発火する
規則の条件部が満たされることによって,その動作部を開始する。
to fire
28.02.33
多重発火
同一の相談において,知識を繰り返しアクセスするために,規則を2回以上発火させること。
multiple firing
28.02.34
活性化(人工知能における)●アク