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JIS X 8101-1:2010
情報技術―バイオメトリック性能試験及び報告―第1部:原則及び枠組み
2010制定
番号
用語
定義
対応英語
4.1.1
サンプル
データ取得サブシステムによる出力としての利用者のバイオメトリック測定値。
例 指紋画像,顔画像及びこう(虹)彩画像は,サンプルである。
注記 より複雑なシステムにおいて,サンプルは複数の提示された特性[例えば,10個の指紋記録,異なる角度から取り込まれた顔画像,左右ペアのこう(虹)彩画像]から構成される場合もある。
sample
4.1.2
特徴
登録テンプレートを構築又は比較するために使用する,(信号処理サブシステムによって)サンプルから抽出した情報のデジタル表現。例 指紋における指紋特徴点の座標,顔画像における主成分係数などが特徴である。
features
4.1.3
テンプレート●モデル
登録サンプルから抽出した特徴に基づいて登録された基準生体特徴。注記 基準生体特徴は,利用者によって提示された規範とすべきサンプルに対する生体特徴からなるテンプレートであることが多い。より一般的には,この登録された基準はその利用者の生体特徴の潜在的な範囲を表すモデルになる。この規格では,“モデル”を含む“テンプレート”を使う。
template●model
4.1.4
照合得点
サンプルから抽出した特徴と蓄積されたテンプレートから抽出した特徴との間の類似度,又はそれらの特徴がいかによく利用者の参照モデルに適合しているかの尺度。
注記1 合致又は非合致は,この照合得点が判定いき(閾)値を超えるか否かで判定される。
注記2 提示されたサンプルから得られる特徴が,蓄積されたテンプレートに近づくにつれて,照合得点は増加する。
注記3 国際規格では用語として“matching score”及び“similarity score”の2語を用いているが,この規格では,記法の煩雑さを避けるために用語を“照合得点”1語とした。照合得点の計算に利用される尺度には,その数値が大きいほど比較したデータが似ていることを表す尺度のほかに,その数値が小さいほど比較したデータが似ていることを表す尺度(相違度又は距離)が利用されることがある。例えば,距離を使う場合には,この規格で“照合得点が増加する”と書かれた箇所は,“距離が減少する”ことを表す。
matching score●similarity score
4.1.5
照合判定
システムにおいて利用者が行う認証要求の正当性を確度高く判定すること。
verification decision
4.1.6
候補リスト
識別入力試行[又は予備選択(プリセレクション)アルゴリズム]によって生成される,ある被験者に関する可能性のある登録者の集合。
candidate list
4.1.7
識別判定
システムにおいて利用者の身元を候補リストから確度高く判定すること。
identification decision
4.2.1
提示
利用者の特定の身体部位についての単一のバイオメトリックサンプルが提出されること。
presentation
4.2.2
入力試行
システムに対する一つ(又は一連)のバイオメトリックサンプルの提示。注記 入力試行結果は,登録テンプレート,照合得点(群)となるか,又はある場合には取得失敗となる。
attempt
4.2.3
トランザクション
生体情報登録,照合又は識別を目的とした利用者による一連の入力試行。注記 トランザクションには,次の三つの種別がある。登録又は登録失敗が生じる登録シーケンス,照合判定結果を生じる照合シーケンス,識別判定結果を生じる識別シーケンス。
transaction
4.2.4
本人入力試行
自分自身の登録テンプレートと合致させようとする利用者による使用法に忠実な単一の入力試行。
genuine attempt
4.2.5
意図的でない偽者入力試行
個人があたかも自分自身のテンプレートとの照合を成功させようとするように,自分自身の生体特徴を提示して,他の利用者のテンプレートと比較する入力試行。(★見出し語の読み方は「にせもの」?★)
zero-effort impostor attempt
4.2.6
意図的な偽者入力試行
個人が疑似又は複製バイオメトリックサンプルを提示するか,又は自分自身の生体特徴を意図的に部分修正することによって,他人の登録されたテンプレートと合致させようとする入力試行。注記 意図的な偽者入力試行の誤り率は,意図的でない偽者入力試行のそれとは異なる。意図的な偽者入力試行で用いられる方法及びスキルについては,この規格の適用範囲外となる。(★見出し語の読み方は「にせもの」?★)
active impostor attempt
4.2.7
提示効果
利用者固有の生体特徴をセンサが取得する仕方に影響を与える多数の変量の影響。例 顔認識においては,姿勢角度又は照明が含まれ,指紋においては,指の回転及び皮膚の水分が含まれる。多くの場合,基本的な生体特徴と提示時変動との区別(例えば,顔認識における表情又は話者照合システムにおける声の抑揚)は,明確ではない。
presentation effects
4.2.8
チャネル効果
センサ及び伝送チャネルのサンプリング,雑音及び周波数応答特性による,変換及び伝送処理中に提示された信号が受ける変化。
channel effects
4.3.1
利用者
バイオメトリックサンプルをシステムに提示する者。
user
4.3.2
被験者
そのバイオメトリックデータが評価の一部として登録又は比較されることになる利用者。
test subject
4.3.3
被験者集団
評価のために集めた被験者の集合。
crew
4.3.4
対象母集団
その性能を評価中であるアプリケーションの利用者の集合。
target population
4.3.5
運用責任者
試験又は生体情報登録を実施する者。
administrator
4.3.6
オペレータ
システム操作者。例 登録を指揮し,照合又は識別トランザクションを監視する要員。
operator
4.3.7
観測者
試験データを記録するか又は被験者集団を監視する試験要員。
observer
4.3.8
試験責任者
試験の定義,設計及び分析に対する責任者。
experimenter
4.3.9
試験機関
試験を主催し,実施する主体。
test organization
4.4.1
テクノロジ評価
既存の又は特別に収集したサンプルのコーパスを用いた,同じバイオメトリックモダリティの一つ以上のアルゴリズムに対するオフライン評価。
technology evaluation
4.4.2
シナリオ評価
包括的なシステム性能を判定するプロトタイプ又は模擬的アプリケーションに対する評価。
scenario evaluation
4.4.3
運用評価
バイオメトリックシステム全体の性能を判定する特定の対象母集団をもつ特定のアプリケーション環境に対する評価。
operational evaluation
4.4.4
オンライン(連体修飾)
画像又は信号の提示時に実行される(連体修飾語で,登録,照合などに前置される。)。注記 オンライン試験は,バイオメトリックサンプルが直ちに廃棄され,蓄積装置に対する要求,及びシステムを通常とは異なる方法で操作する要求を削減する利点がある。しかし,できれば,画像又は信号を収集することを推奨する。
online
4.4.5
オフライン(連体修飾)
画像又は信号の提示とは切り離して実行される(連体修飾語で,登録,照合などに前置される。)。
注記1 オフラインでの登録及び照合得点計算のための画像又は信号のコーパス収集は,その入力試行を厳密な管理下で行うことが許され,そのテンプレート画像はいかなるトランザクションにも使用することができる。
注記2 テクノロジ試験は,試験の定義から明らかなようにオフライン処理であり,データ蓄積を必要とする。しかし,シナリオ及び運用試験では,試験者にとってはオンライントランザクションがより容易なことがある。これは,システムの通常の動作を使用することができ,また,画像又は信号の蓄積が推奨されているとはいえ必す(須)ではないからである。
offline
4.5.1
照合
利用者による肯定的な身元確認要求に対して,提示されたサンプルバイオメトリック測定値から生成した特徴を要求身元の登録テンプレートと比較し,身元確認要求に関する諾否の決定を返すアプリケーション。
注記1 要求身元は,氏名,個人識別番号(PIN),カード,又はシステムに提供された他の一意な識別子の形態をとることがある。
注記2 “生体情報とある身元情報とを提示する人物が,その身元情報をもつ人物そのものであることを主張する身元確認要求”を“肯定的な身元確認要求”といい,“身元情報を同時に提示しない,又は自分がだれかを主張せずに行う身元確認要求”と区別する。
verification
4.5.2
識別
登録データベースの検索を実行し,0個又は1個以上の身元情報からなる候補リストを返すアプリケーション。
identification
4.5.3
登録者非限定識別
すべての潜在的利用者がシステムに登録されているとは限らない識別。
open-set identification
4.6.1
生体情報登録失敗率●FTE
ある集団に対して登録処理を行った場合に,システムが登録処理を完了できなかった人数の割合。注記 実測される生体情報登録失敗率は,被験者集団の登録について測定される。被験者集団から計測又は観測された生体情報登録失敗率から予測又は推定した登録失敗率が対象母集団全体に適用される。
failure-to-enrol rate●FTE
4.6.2
取得失敗率●FTA
システムが適切な品質の画像若しくは信号を取り込むか,又は位置を特定することができなかった照合若しくは識別入力試行の割合。注記 実測される取得失敗率は,予測又は期待された取得失敗率と異なる(前者は,後者を見積もるために使われる可能性がある。)。
failure-to-acquire●FTA
4.6.3
誤非合致率●FNMR
サンプルを供給した利用者から登録したある生体特徴のテンプレートに合致しないと誤判定された本人入力試行の割合。注記 計測又は観測された誤非合致率は,予測誤合致率又は期待誤合致率と異なる(前者は,後者を見積もるために使われる可能性がある。)。
false non-match rate●FNMR
4.6.4
誤合致率●FMR
意図的でない偽者入力試行が,試行者本人以外のテンプレートに合致すると誤判定される割合。
false match rate●FMR
4.6.5
誤拒否率●FRR
本人の身元確認要求の照合トランザクションにおいて,誤って拒否する率。
false reject rate●FRR
4.6.6
誤受入率●FAR
他人の身元確認要求の照合トランザクションにおいて,誤って受理する率。
false accept rate●FAR
4.6.7
識別率●正受入識別率
システムに生体情報を登録した利用者による識別トランザクションにおいて,システムの出力が利用者の正しい身元情報を含む率。
注記 識別率は,次の二つに依存する。
(a) 登録データベースのサイズ。
(b) 照合得点及び/又はマッチングして出力される身元情報の数についての判定いき(閥)値。
identification rate●true-positive identification rate
4.6.8
誤拒否識別率●FNIR
システムに生体情報を登録した利用者による識別トランザクションにおいて,システムの出力が利用者の正しい身元情報を含まない率。注記 誤拒否識別率=1−識別率
false-negative identification-error rate●FNIR
4.6.9
誤受入識別率●FPIR
システムに生体情報を登録していない利用者による識別トランザクションにおいて,システムの出力がいずれかの身元情報を含む率。
注記1 誤受入識別率は,次の二つに依存する。
(a) 登録データベースのサイズ。
(b) 照合得点及び/又はマッチングして出力される身元情報の数についての判定いき(閥)値。
注記2 登録者限定識別では,すべての利用者が登録されているため,誤受入識別はない。
false-positive identification-error rate●FPIR
4.6.10
予備選択アルゴリズム
登録データベースとの識別検索において,照合しなければならないテンプレートの数を減らすためのアルゴリズム。
pre-selection algorithm
4.6.11
予備選択誤り
(予備選択アルゴリズムにおいて)同一利用者の同一生体特徴からサンプルが与えられたとき,対応する登録テンプレートが予備選択候補内に含まれない誤り。注記 データベース分割(binning)法の予備選択において,ある利用者のある生体特徴を登録した後に,同一人物・同一生体特徴のサンプルが,異なるデータベース分割枠(bin)に配置された場合に予備選択誤りになる。
pre-selection error
4.6.12
絞込み率
(予備選択アルゴリズムにおいて)予備選択されるテンプレート数の平均値とテンプレート総数との比。
penetration rate
4.6.13
識別順位
利用者の正しい身元が識別システムの出力した身元リストの中にある場合,その順位。
注記1 識別順位は,登録データベースのサイズに依存し,“n中の候補順位k”と引用されることが望ましい。
注記2 利用者の正しい身元と同じ照合順位をとる別の身元がある場合には,順位の最小値とする。
identification rank
4.7.1
検出エラートレードオフ曲線●DET曲線
2種の誤り率を両軸(第1種の誤りをx軸,第2種の誤りをy軸)にプロットするように,ROC曲線を変形したもの。
注記1 DET曲線の例を10.6.2,図3に示す。
注記2 第1種の誤りと第2種の誤りとの組合せとして,(誤非合致率,誤合致率),(誤拒否率,誤受入率),(誤拒否識別率,誤受入識別率)などがある。
detection error trade-off curve●DET curve
4.7.2
照合精度持性曲線●ROC曲線
判定いき(閾)値を媒介変数として,第2種の誤り率(例えば,受理された偽者入力試行率)をx軸に,“1から,対応する第1種の誤り率を引いたもの”(例えば,受理された本人入力試行率)をy軸にしてプロットした曲線。注記 ROC曲線の例を10.6.3,図4に示す。
receiver operating chracteristic curve●ROC curve
4.7.3
累積識別精度特性曲線●CMC曲線
順位値をx軸に,その順位以内での正しい識別率をy軸に記入した,識別試験の結果のグラフ。注記 CMC曲線の例を10.6.4,図5に示す。
cumulative match characteristic curve●CMC curve
4.8.1
分散,V
統計分布の広がりの尺度。
注記1 確率変数Xの平均をE(X)とすると,V(X)=E[(X−μ)^2],ここでμ=E(X)。
注記2 分散は,既知ならば,推定結果の真値に対するばらつきを示す。
variance,V
4.8.2
信頼区間
下側推定値L,上側推定値Uを端点とする区間であって,パラメタxに対して,xの真の値がLとUとの間にある確率が規定値(例えば,95%)であるもの。
例 [L,U]がパラメタxの(95%)信頼区間であるならば,確率(x∈[L,U])=95%である。
注記 実験サイズが小さいほど,信頼区間は広くなる。
confidence interval
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